「いえ、まだ一口飲んだだけですから、交換しましょう」

「……そうしてもらえるか? ちょっと想像以上に甘かったわ、これ」

「ふふふ。はい、私は甘い物も好きですからおそらく平気です」

お互いのパックを交換し、再び生徒会室に響く二人分のチューという音を聞く。

「ちょっと甘過ぎな気もしますが、おいしいです」

「イチゴのあとのコーヒーだからか、いつもより苦く感じるな」

「でしょうね」

「……………………」

「……………………」

そこでふと、気づいた。

「(これって間接キス!?)」

「あっ……」

「っ!?」

どうやら校務員さんも同じことを考えていたらしく、目が合った瞬間、はじけるように目をそらされた。

「え、えっと……」

ヤバイ。なんか……ごまかさないと……心臓がバクバクしてる。

「えっと……あ、そうだ。食事! 食事の話!」

「え? 食事?」

「そ、そう! さっき話しかけてた食事の話だ」

少しわざとらしい気もするが、その話がしたかったのも事実だ。

「さっきさ、自分の分を作るのは面倒だって話してたよな?」

「は、はい……」

「それってさ、他人の分なら苦じゃないってことでいいのか?」

「え? あ、そうですね……作って喜んでもらえるのはうれしいですから、苦ではないです。メイドの本分とでも言うのでしょうか」

「そうか……」

「あの……それがなにか?」

「その、なんだ……。俺からひとつ提案があるんだが……」

「提案……ですか?」

「あぁ。その……俺の家にこないか?」



※サンプルシナリオは製品より一部抜粋編集してあります。ご了承下さい。